2014.02.09 Sunday
空地
空地を見なくなった。
広場や公園はあるが、空地は見なくなった。 小さい頃、空地は社交場だった。倶楽部だった。 約束したわけでもないのに、申し合わせたわけでもないのに、空地に行けば、かならず、だれかがいた。友だちがいた。 近所のお兄ちゃん、お姉ちゃんがいた。 自分より小さな、よその弟、よその妹がいた。 みんなで遊んだ。 鬼ごっこをした。かくれんぼをした。押しくらまんじゅうをした。 胴馬をした。駆けっこをした。毬あてをした。 野球をした。 山の中に入って採ってきた木切れが、バットだった。 駄菓子屋で売ってるゴムまりが、ボールだった。 暗くなるまで遊んだ。みんなで遊んだ。 笑って、泣いて、怒って、笑って……。 ケンカもした。砂場のなかで取っ組み合って、殴り合った。 仲直りもした。相手の顔を見られず、靴の先だけを見て、 「ゴメンな」 と、云った。 イヤなヤツだと思ったヤツもいた。いいヤツだと思ったヤツもいた。 でもやっぱり、みんな、いいヤツだった。 パソコンはある。スマホもある。ラインも、チャットも、ツイッターもある。 だけど、空地は、なくなった。 |