2014.03.16 Sunday
『荒野の七人』論〜12. ソテロの通告
チコのもたらした情報によって、カルヴェラたちが諦めずに、再びこの村を襲うつもりでいることがはっきりします。
村人たちは最初、チコがもたらした情報を信じようとはしませんでした。カルヴェラたちが諦めず、再び襲ってくることは、村人たちには恐るべきことです。村人たちは、カルヴェラは諦めて他所の村へ行くと信じています。チコがもたらした情報を、村人たちは信じようとはしません。「なんで分かる」と、それが虚報であるにあるに違いないと思い込もうとします。カルヴェラたちの来襲を怖れるあまり、カルヴェラは諦めて他所の村へ行くに違いないという思いにすがりつこうとするのです。それが、チコのもたらした情報を虚報であるとして、打ち消そうとする心情となって現れます。 しかし、その村人たちの願いは砕かれました。 チコのもたらした情報は、チコ自身がカルヴェラたちの中に潜入して、カルヴェラたちからじかに探ってきたものです。 村人たちは、カルヴェラたちから村を守るために、クリスたちガンマンを雇いました。一度戦って追い払ってしまえば、カルヴェラたちは諦めて、他所の村へ行ってしまうと思っていました。それが逃げるどころか、来襲してくることが確実になったのです。カルヴェラたちが勝ったらエライことになる、と、戦いを忌避する心情が強くなります。 クリスたちガンマンや、ヒラリオたち少数の村人たちは、カルヴェラたちと戦って勝つ以外に、村を守ることはできないと考えます。 ソテロたちは、カルヴェラたちと戦っても、いたずらに殺されるだけで、勝つ見込みはない、それよりもカルヴェラに和を請うて、食糧でもなんでもやるから、殺されずにすむようにするべきだと考えます。 村人たちの大勢は、ソテロの側にあります。 戦いを主張するクリスに、ソテロは、村から出て行くよう申し渡します。手遅れにならないうちに、村から出て行ってくれ、と云うのです。 チコ、ブリット、ヴィンが、クリスの傍に集まります。 クリスは、ソテロに、いまの言葉が本気かどうか念を押し、他の村人たちに向かって、最後まで戦う勇気のある者は自分のほうへ来るよう云います。 何人かの村人たちが、クリスたちのもとに集まります。その村人たちに、ソテロは、ガンマンたちには帰ってもらう以外にない、と、説きます。 クリスはソテロの言葉を聞き終えると、 「ようし話は分かった。ここで諦める卑怯者は前に出ろ。この俺がブチ抜いてやる。殺されたくなかったら、もうひと言も口にするんじゃない」 と、怒鳴り、背を向けて、部屋を出ていきます。 ハリーがクリスに続き、無言で村人たちをにらみつけていたブリットが従います。ヴィンも、しばらく逡巡した後、彼らに続きます。 威勢のよかったチコが、悲しげに目を伏せ、最後に部屋を出ます。 ガンマンたちが部屋を出ると、ヒラリオがソテロたちに対して、一度はじめたケンカだ、最後までやってやる、おまえらなんかいなくてもいい、と、啖呵を切ります。 村人たちの意見は完全に二分されました。ここで二分されたのは、村を守る方法においてであって、両者とも、村を守ると云う根底に関しては一致しています。ただソテロの云うように、カルヴェラに和を請い、食糧や物資を差し出して生きながらえることでは、本当に村を守ったことにはなりません。ここで勝利を諦めてカルヴェラに屈することは、村をカルヴェラたちに売り渡すことを意味します。利敵行為であり、村に対する裏切りです。それがクリスの云う「卑怯」の意味です。村人たちが、自分たちの力で、自分たちのために、そこで生きるに価する「いい村」にすることが、本当に村を守ることです。 クリスはそのことを理解していますが、ここでソテロたちを相手に、そのことを説いて理解させ、納得を得ることはできません。いまは言い争っているときではありません。 クリスは、あくまで戦う意志のある者を選別します。そして、怒りをあらわに見せることで、無意味な言い合いを終わらせると、善後策を講じるために、別室へ下がります。 |