2014.03.27 Thursday
ヤン坊、マー坊
ウェブのニュースで、ヤンマー社提供の天気予報番組『ヤン坊マー坊天気予報』がこの3月末で終了すると云うことを知った。
55年にわたって放送されてきた番組であることをはじめて知った。 「♪ぼくの名まえはヤン坊 ぼくの名まえはマー坊」ではじまるこの番組のテーマソングは、だれもが一度は口ずさんだことがあるはずである。 『サザエさん』とともに、小さい頃から馴染んだ番組だった。 『ドラえもん』より前から知っていたかもしれない。 その頃から、疑問に思っていたことがある。 「なんで農業用の機械をつくってる会社(当時はそう思っていた)が、天気予報のテレビをやってるんやろ?」 今回その疑問が解けた。 或る日、漁に出た漁師が、突如の荒天に見舞われて、船のエンジンがストップしてしまい、遭難した。 ヤンマーのエンジンだった。 世界初の小型ディーゼルエンジンの開発者にしてヤンマーの創業者、山岡孫吉は、製品の欠陥による事故ではないにもかかわらず、遺族に損害金を支払い、丁重に詫びた。 それ以来山岡氏は、会社が続く限り『ヤン坊マー坊天気予報』をやり続けるように言い遺して、昭和37年、逝去した。 「いくら性能がよいエンジンを搭載した船でも、嵐の時に船出したらひとたまりもありません。安全を確認して出漁して下さい」 山岡氏のこの思いが、55年間にわたる『ヤン坊マー坊天気予報』には、込められていたのである。 山岡さんは、人のためになる製品をつくることを第一義とされ、利益はそれに対する「お礼」あるいは「ご褒美」、と、考えておられたのではないかと思う。 パナソニックの創業者、松下幸之助さんもそうだった。 松下さんが家電製品を手掛けらたのは、「過重な家事労働に苦しむ主婦の負担を、少しでも軽くさせてあげたい」という志からだったと聞く。 いつしか日本は、利益を得るために利益を求めるようになってしまったのではなかろうか。 そんな現在に生きる自分を深く恥じ、反省するとともに、ヤン坊とマー坊に、 「いままでお疲れさんやったね。ありがとね。 君たちと一緒にいられて、愉しかったよ。 君たちのこと、ぜったい、忘れないよ」 と、伝えたい。 あわせて、 「『ヤン坊マー坊天気予報』がなくなっても、山岡さんのお志しは、けっして、忘れませんよ」 と……。 |