2016.03.11 Friday
他人の日記
他人の日記を読む、などと云うことは、およそ、紳士たるべき者のなすべきことではない。
したがって、『土佐日記』も、『提中納言日記』も、『蜻蛉日記』も、『更級日記』も、読んだことはない。 ましてや、『アンネの日記』など、女の子の日記を読むなどとは、以ての外、である。 アンネ・フランクは、ユダヤ人である、と、云うだけで、ナチス・ドイツによって迫害され、家族とともにオランダに逃れるが、ナチス・ドイツはそのオランダをも占領してしまう。 亡命先のオランダでも開始されたナチス・ドイツによるユダヤ人狩りから逃れるために、彼女は家族とともに、暗い隠れ家での潜伏生活を余儀なくされる。 堂々と表に出られない、人目を避けて暮らす日々……。 つねにユダヤ人狩りの恐怖に怯え、命の危険にさらされる毎日……。 いつになれば、みんなとおなじ生活ができるようになるのか、それすらも判らない……。 けれどもアンネは、そんな生活を、精一杯明るく過ごす。恋もする、落ち込みもする、はしゃぎもする、泣きもする、笑いもする……。 そんな生活が、2年間続いた。 2年後、その隠れ家はナチスの親衛隊によって発見され、アンネは他の住人たち同様、ナチスの強制収容所に送られた。 アンネはそこで死ぬ。15歳の、若き生命だった。 ナチスに怯え、ナチスのシンパに怯え、潜伏生活のなかで、それでも一生懸命に愉しく、明るく過ごし、わずか15年の人生を、強制収容所のなかで、終えざるを得なかった。 彼女はその日記のなかに、こう記している。 「それでもわたしは、人間はすばらしい、と、信じています」 と……。 “しょせん、人間なんて……” と、したり顔につぶやくヤツラをよく見かけるが、ヤツラはアンネの万分のひとつの苦しみや悲しみでも、背負っているだろうか? |