ろ〜りぃ&樹里とゆかいな仲間たち

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アルセーヌ・ルパンと“過労死”
アルセーヌ・ルパン、と、云えば、ルパン三世のお祖父ちゃんとして、また、怪人二十面相のモデルとして、日本では、昔からなじみの深い人物です。その物語を読んだことがない人はいらっしゃったとしても、その名前を知らない人は、おそらく、いらっしゃらないのではありますまいか。
そのルパン氏には、“盗みはしても、人は殺さない”と云ったイメージが定着しています。
たしかに氏は、『水晶の栓』と云う作品の中で、部下が人を殺したとき、「血! 血! おれが血を好かないことは知ってるだろう。血を見るよりは、殺されるほうがいい。」と、云っています。
しかし残念ながら、子供向けにリライトされた物語だけでなく、いわゆる大人本を読んだことのある方ならご存じでしょうが、後期の作品では、兇悪な犯罪を犯した犯罪者にたいして、ルパン氏は、みずから手は下さないまでも、相手を追いつめて、自殺せざるを得ないように仕向けています。
なるほど、これらの場合、ルパン氏は、みずから直接手を下していないにしても、殺人を犯した、と、批難されても、いたしかたありますまい。

2015年(平成27年)12月25日、クリスマスの日、ひとりのうら若き女性が、みずからその生命を絶ちました。
度重なる上司の叱責、2時間ほどしか寝る間のない長時間労働の毎日……。
徹夜して作った企画書を目の前で破り捨てられ、人格を否定されるような言葉を浴びせられました。
――生きるために働いているのか、働くために生きているのか、分らない。
女手一つで自分を育ててくれた母親の苦労に報いるために、必死で勉強し、日本一の難関と云われる東京大学に合格し、電通と云う日本最大の広告会社に就職した彼女を待っていたのは、しかし、会社の“奴隷”とも云うべき、過酷な生活でした。
若き日のことを形容して、“花も実もある”と云いますが、彼女には、花も実もありませんでした。
電通と云う、日本最大の広告企業会社が、彼女の花も実も、無情に奪ってしまったのです。

マスコミは彼女の自死を、“苛酷な長時間労働によるもの”と報道していますし、いわゆる労災の認定も、それを理由に下されたようです。
しかし彼女の死の原因は、本当に、“苛酷な長時間労働によるもの”だったのでしょうか。
わたしは、そうは、思いません。少なくとも、それだけが原因だった、とも、それが第一の原因だった、とも、思いません。
マスコミに意識操作された多くの人々は、彼女が自死したのは、“苛酷な長時間労働によるもの”だったのだ、と、思うでしょう。
だからこそ、
――俺たちの若い頃は、それぐらい当たり前だった。
――昔の人たちは、それくらい、ふつうだった。
と、云う、時代遅れの、“精神主義”、“根性主義”が、正当化されます。
また、おなじような境遇にある人たちも、
――俺たちだって、おなじような立場にあるんだ。
――わたしたちだって、おんなじように働いてるわ。
と、云う、わたしのいわゆる、“奴隷根性”に染まってしまいます。

彼女の自死の原因は、“苛酷な長時間労働によるもの”と云うよりも、陰湿陰険な手段を用いてなされた仕事の強要――いわゆるパワハラ――にあった、と、思います。
彼女は、会社によって、殺されたのです。
なるほど、表面上は、自殺だったのでしょう。
しかし、その本質は、会社による、“殺人”です。

それが理解できないからこそ、マスコミをはじめとして、内閣員、政府官僚、果ては労働組合までが、“長時間労働”を問題視しているのです。
無能と云われる所以です。
無能であるからこそ、“過労死”などと、表現されるのです。
彼女の死は――彼女のみならず、同様の理由により自らその生命を断った多くの人々の死は――、けっして、“過労死”ではありません。
それは、“会社企業による殺人”です。これはれっきとした、“殺人事件”、犯罪事件なのです。
これからは、“過労死”ではなく、“会社殺人”、“企業殺人”と、書いてもらいましょう。
受け取る側は、“過労死”と書かれていれば、それを“会社殺人”、“企業殺人”と、読み換えましょう。
| 築山散作 | 気まぐれなコラム | 20:43 | - | - |


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